第17章 姫の手紙
(佐助目線)
謙信「佐助、お前の国はどこだ。正直に言え!
今度ばかりは言い逃れはさせん」
謙信様は本気だった。
全身から迸った殺気が刀の先から伝わるようだった。
ギラギラと野獣のように光る双眸が逃げるのを許さないと睨んでいた。
俺は両手を上げて逃げる素振りも戦う意志もないことを示した。
佐助「謙信様。お話しますから刀を降ろしていただけませんか」
自分宛の文を謙信様に見せた時から真相を話すつもりでいた。
謙信「……」
謙信様は仕方ないという顔で刀をしまい俺の前に荒々しく座った。
正面から無言の圧力と殺気が向けられ全身の産毛がチリチリと逆立つようだった。
幸村「どういうことなんだ?」
信玄「幸、まずは佐助の話を聞こう。行きがかり上、俺達も聞かせてもらうぞ、佐助」
幸村と信玄様も謙信様と並んで座った。
俺は3人に固く口留めをしてから真実を話した。
舞さんと俺が500年先の人間であること。
ワームホールで偶然戦国時代に飛ばされ、俺自身は4年前の謙信様が倒れていた戦場に、舞さんは燃え盛る本能寺に、それぞれ時間も場所も違うところに降り立ったことなど。
3人とも最初は眉をひそめて聞いていたけれど最終的には信じてくれた。
信玄「信長の寵姫と聞いて安土の姫を三つ者に調べさせたんだが、何一つ情報を得られなかったのはそのせいか…」
幸村「そんな先の世からきてたのかよ。人一倍平和ボケした顔してたのはそのせいか?」
佐助「平和ボケというか500年後の日の本に戦はない。
銃や刀を所持して歩くのは国の決まりで禁止されているんだ」
信玄「姫の国は桃源郷のような国だと思ったが…そうか、500年先の世の話だったんだな」
謙信「500年後だろうが1000年後だろうがどうでも良い事だ。
佐助、次の『わーむほーる』とやらはいつ開く?
俺はあいつがどこに居ようと探しだしてみせる」
細かい事はどうでも良いといった謙信様に残酷な真実を告げる。
佐助「もう、開きません」
3人「「「…は?」」」
三人の声が重なる。
いち早く謙信様が我に返って口を開いた。
謙信「もう開かないとはどういうことだ?」
目で人が殺せるなら今日だけで謙信様に2度は殺されているだろう。