第17章 姫の手紙
謙信様
読みにくい文を書いてしまって申し訳ありません。
謙信様と佐助君ならこの暗号を解いてくれる。そう願ってこの文を書いています。
春になったら越後へ行きます。待っていますというお約束を守れなくて申し訳ありません。
先月より体調を崩してしまい、このままではおそらく死に至ります。
謙信様と共に歩む道を夢見ましたが、この病は国へ帰らねば治せません。
病と言っても体質のようなものですが…母に似てしまったようです。
だから決して謙信様のせいではありません。
いつかのように『関わった人間が不幸になる』などと思わないでくださいね?
謙信様と離れるのは身を裂かれる思いですが、やむを得ないところまできてしまいました。
もうずっと食事も水も口に出来ず一人で歩くこともままなりません。
ごめんなさい、謙信様。
あなたの傍で幾千の日を乗り越えて証明してみせるってお約束したのに。
でも一時とはいえ、あなたと想いを通わせることができて幸せでした。
あなたに想いが届き、愛された日があった。
あの日を想うだけでこの上なく幸せです。
生まれてきて良かったと思えるほどに。
謙信様と過ごした短い日々を宝物にして私は生きるために帰ります。
勝手なことばかり言って申し訳ありません。
きっと謙信様はお怒りになることでしょう。
約束を破って勝手に居なくなるような女など、どうぞ忘れてください。
ひと時の気の迷いだと思ってくださっても構いません。
どうぞお体を大切に、この世を生き抜いてください。
舞