第17章 姫の手紙
『謙信様の………が、いつも綺麗だなって思っていました』
愛おしげに謙信を見つめてくる…真っすぐな薄茶の瞳。
謙信「青と緑だ。あいつが…好きだと言っていた。
きっとその色に何かしら意味があるはずだ」
謙信は片手で両目を押さえた。
佐助は短く返事をして文に目を落とす。
佐助「ビンゴです。青と緑の線はいずれも『TE』『N』『TA』の文字にだけ使われています。
これはきっと『青と緑は残す』という意味でしょう」
幸村「つまり『TE』『N』『TA』であっても青と緑の線が引いてあれば抜かずに残すってことか?」
佐助「ああ、そういうことだ。
暗号にするため『TE』『N』『TA』を抜くように指示を出したけれど、この3文字を使いたい…だからこの下線が必要になったんだ。
この青と緑は『抜かずに残すTE、N、TA』という意味だ」
幸村「じゃあ、他の……たとえばこの『A』とか『KO』文字の下線はなんの意味があったんだ?」
幸村が指差す文字には紫と茶色の下線が引かれている。
佐助「それはカモフラージュだ。意味はない。
普通にローマ字として読めばいいみたいだ」
幸村「鴨……なんだって?」
佐助「カモフラージュ、だ。
たとえば『残して欲しい『TE』『N』『TA』』の下にだけ下線をひいたらどうなると思う?
この文が他人の目にさらされた場合、ローマ字を読めなかったとしても字の形として、この3文字に何かあると思われてしまう。
ローマ字を読めたなら『てんぬき』や『たぬき』がわからなかったとしても暗号を解かれてしまうかもしれない。
そう考えた舞さんは緑と青の線を隠すために、全部の文字に下線を引いたんだ。
木の葉を隠すなら森の中ってやつだ」
幸村「めんどくせぇ…」
幸村は顔をしかめ信玄はしきりに感心して頷いている。
信玄「そうかー?こんな暗号初めてだ。俺は楽しいぞ」
正反対の主従の反応に佐助は口元を緩め、解読を待っている謙信のために文に集中した。
・てんぬき、たぬきというキーワードで『TE』『N』『TA』を抜く
(ただし青と緑の下線が引いてあるものは残す)
・その他の文字はローマ字として普通に読む
種がわかってしまえば簡単なことで、五分もしないうちに舞の文の内容が明らかになった。