第17章 姫の手紙
信玄「姫はローマ字の文章を囲うように草花、野ウサギ、月や星の絵を描いている。
しかしこの2つの絵が何か俺はわからない。きっとこれが鍵だ」
幸村「どれですか…なんだこれ?」
二つの絵を見ても何もわからない幸村。
佐助「これはもしかして…でもこっちはわからないな」
一つの絵に心当たりがあったが、もう一つはわからない佐助。
謙信「……『どらとらざえもん』と『てんぬき』だろう」
あっさりと二つの答えを出した謙信。
信玄は謙信の肩をポンと叩いた。
幸村「…なんですかそれ?」
佐助「どらとらざえもんは先の世からやって来たからくり人形だ。不思議な道具をたくさん持っていてドジな主人公の女の子を助けてくれる。
ドラムと呼ばれる南蛮の太鼓を叩くのが好きでいつも持ち歩いている。トラを模した人形なのに耳をかじられたせいでネズミが大嫌いなんだ。
もちろんこれは架空のお伽話の設定だ」
幸村「…そ、そうか」
佐助が生き生きと語るものだから幸村は若干ひき気味だ。
信玄「それで?同郷の佐助も知らなかったこの『てんぬき』っていうのはなんだ?」
謙信が舞の説明を思い出して教えると、三人は『そんな料理があるのか』と納得していた。
信玄「この二つが鍵なのは間違いないな…」
信玄が文をじっと眺めた。落ち着いた黒の瞳が思慮深く文字を追っている。
信玄「天ぬきが鍵なら『て』『ん』を…抜いてみるか」
佐助「なるほど、『TE』『N』を抜いてみます。
謙信様、新しい紙を一枚貰ってもかまいませんか?」
謙信は頷き、佐助は広間にある文机から一枚紙を貰うと懐から手製の鉛筆を取り出した。
その鉛筆を見て謙信は目を細めたが特に追及もせず、
謙信「佐助、『た』も抜いてみろ」
そう言った。