第16章 武将くまたん
秀吉は読み終えた文を丁寧に畳むと信長へと差し出し、自分の席へと戻った。
信長はそれを広げて目を通し、赤い瞳で一同を見回した。
信長「それぞれのくまたんを持て」
武将達「はっ」
武将たちは一礼し、それぞれの武将くまたんを手に取り席へ戻った。
細かい仕事に感心する者、感触を確かめる者、反応は様々だ。
三成「しかし何故燃やしてくださいなどとおっしゃるのでしょう。こんな可愛らしいものを燃やしてしまうのは心苦しいです」
秀吉「……さぁな。舞がそうしてくれと言うなら、そうしてやった方が良い」
家康「まあ自分の姿を模したくまの人形が後世に伝って知られるのも恥ずかしい話だしね」
三成「後世に伝わって…」
光秀「……そう深く考えるな。言われたようにすれば良いだけだ。
さして難しいことでもないだろう」
政宗「この乱世において爺になるまで生きて欲しいなんて、そっちの方がよっぽど無理難題だ。
しかしあいつの国は一体どこなんだろうな」
光秀・秀吉「………」
武将たちは口を動かしならお互いのくまたんを見せ合いっこしている。
家臣達が見たら主の姿に目を疑いそうな風景だ。
政宗「それで姫たんは誰が預かるんです?要らなければとありましたが俺は欲しい」
三成「僭越(せんえつ)ながら私も姫たんが欲しいと思っております」
光秀「姫たんはわるたんが『大好き』なのだろう。わるたんと一緒にしてやってもいいが」
家康「はあ。揃いもそろって人形を欲するなんてどうかしてる」
秀吉「そうか?俺は欲しいけどな。ほら姫たん、可愛いぞ。よく見ろ家康」
秀吉が姫たんをずいと家康の鼻先にやった。