第16章 武将くまたん
秀吉「追伸だ。
『干飯が好物と聞いたけれど見たことがないので、おにぎりにしました。
姫たんが居なくなっても本をたくさん読んだ後はちゃんとご飯を食べて欲しいなと思って、大きなおにぎりにしてみました』…とある。
あと見た目は他のくまたんと同じだが、なりなりだけ柔らかくて軽い。
これについては『なりなりの心はとても綺麗で純粋。戦の最中は別だけど、普段はフワフワ柔らかな印象があったので、なりなりだけ中に詰める綿の種類を変えてみました』だそうだ」
三成「舞様が私を尊敬してくださっていた?」
信じられないというように三成の目が見開かれた。
目元が薄っすらと赤い。
家康「ちゃーむ…なんだって?南蛮の使者に聞く言葉が増えましたね。
ていうかなんですか『じゃっく大好き』って。
あの胸の札いらない」
家康が不満そうになりなりを見る。
秀吉「姫たんが居なくなっても…か。
三成、舞にいつまでも心配させないように飯はちゃんと食えよ」
三成「はい!舞様がおっしゃるなら…」
『三成君、この本全部読んだの?内容をほぼ完璧に覚えているなんて、すごく頭が良いんだね。』
『ご飯食べた?おにぎり作ったんだけど食べる?』
『普段は笑顔が眩しいから忘れそうだけど戦に行く時は立派な武将の顔だね』
『猫の名前は…え?ねこさんなの?ふふっ、三成君って面白いね』
三成が読書に夢中になっていた際、舞が気づいてもらおうと至近距離で呼びかけてきた事があった。
その時の薄茶の瞳の色、花のように芳しい香りが記憶に新しい。
それを思い出し三成の胸に空虚な風が吹く。
(胸に穴があいて、そこを風が吹き抜けていくようです。
この想いを忘れることはできるのでしょうか…)
三成「…私よりも舞様の方が綺麗で純粋な心の持ち主でした」
寂しげに三成がこぼした呟きに、それを茶化すでもなく政宗が相槌をうった。