第16章 武将くまたん
三成の喉がコクンと鳴ったのを、隣に座っていた家康だけが聞いていた。
秀吉が風呂敷の結び目を解いて、三成に見せた。
三成と同じ着物を着たクマの人形は眼鏡をおでこに乗せていて膝にネコを乗せている。
『ひでたん』と同じように胸に札をつけていて、それには『じゃっく大好き』と書かれている。
左耳の下の毛が少しボサボサしていて、三成の寝ぐせを表現したものだと誰しもがわかった。
山積みされたたくさんの本を両手に持ち、その一番上に大きなおにぎりが乗っている。
6つのくまたんの中で唯一ニッコリと笑っている顔だ。
目の下の泣き黒子など、こと細かに再現されていた。
三成「これが舞様が私に作ってくださったものなんですね」
感嘆の吐息をもらす三成の目には抑えがたい熱が揺らめいている。
政宗「今度はなんて名前だ?光秀の時に使わなかったから『みつたん』か?」
光秀「いや、そう思わせておいて名前の二文字目からとって『なりたん』かもしれないぞ」
家康「いい加減、『たん』から離れたらどうですか」
秀吉は三成の人形を信長の前に置いてから文に目を落とす。
秀吉「これは『なりなり』だ」
政宗「……」
光秀「……惜しい」
家康「……惜しい」
三成「……なりなり」
秀吉「なりなりは初めて出会った時から笑顔が素敵で紳士的。
じゃっくのことが大好き。
本に夢中になると寝食忘れるので、ひでたんと姫たんはとっても心配してお世話をしてしまう。
寝ぐせがちゃーむぽいんと。
普段はおっとりお穏やかなのに戦場に向かう時はキリッと頼もしい。
どんな混乱の場においても冷静な判断ができて、姫たんは尊敬している。
困ったら頼って欲しいと言ってくれて、ありがとう。
来たばかりで不安だらけの心が、あの言葉で救われました」
秀吉はそこで一度休んでから文面を追う。