第16章 武将くまたん
(第三者目線)
人払いされた安土城広間。
そこに信長、秀吉、光秀、政宗、家康、三成の6人が集まっていた。
舞が安土を去ったという知らせに、政宗は奥州より安土に馳せ参じ、家康もまた予定を早めて安土入りした。
舞が姿を消した時の様子は信長と秀吉、光秀の三人の秘密とされ、治療困難の病のため国へ帰ったとだけ伝えられた。
家康「原因不明の病と見立てられた時に、何故俺に知らせてくれなかったんですか。
もしかしたら何か手を打てたかもしれないのに」
政宗「直ぐには来られないにしても文で病人食の助言くらいできたぞ。なんで黙ってたんだ」
家康と政宗が秀吉を問い詰めたが秀吉が答える前に、信長の低い声で場が静まった。
信長「騒ぐな。お前たちに知らせなかったのは舞たっての願いだったからだ。
お前達が自国のことに集中できるよう、知らせないようにとな」
家康「……」
(馬鹿じゃないの。舞一人にかまったくらいで国のことを疎かにするわけないのに。…俺がそんな軟(やわ)な人間だと思ってたの?)
政宗「……」
(俺の力をなめてんのか?飲まず食わずで死にそうになってた人間が何を遠慮してんだ!)
二人は至極不満そうな顔をして黙り込んだ。
信長の手前口を閉じたが、言いたい事があるのは目に見えてわかった。
秀吉「二人とも気持ちはわからなくはないが、迷惑をかけたくないという舞の気持ちを汲んでやってくれ。
それに今日はその事を話すために集まったんじゃない」
そう言うと傍に置いてあったものに目をやった。
視線の先には南蛮の使者から信長へ献上された珍しい籠があり、南国に生えるという丈夫なツルで編んである。
信長が舞に与えた物だった。
秀吉「これは舞の部屋に残されていたものだ。
別れ際に、ここに居る人間に渡すように頼まれた。
まずは全てを信長様に見て頂いて、その後、各々の手に渡す」
一同の視線が籠に集まった。