第15章 雪原に立つ
皆と他愛もない話をしている間にも、この時代との別れに胸が痛み、時に手で掴まれたかのようにギューっと苦しくなった。
(もうすぐ…もうすぐお別れだ)
この期に及んでも謙信様を待っている。
何らかの方法でこの状況を知り、追いかけてきてくれないかと。
(謙信様……)
声をかけてくれる皆に笑みを返しながら心の中では涙を流していた。
(あ…)
日差しがスッと雲に遮られ辺りが暗くなった。
「迎えが来たと思います…」
光秀さんが私を地面に降ろした。
ふらついたけれど、なんとか二本の足で立つことができた。
歩きにくいので体を包んでいた布を取り払うと、冷気で体がブルっと震えた。
寒いけど返すあてもないので厚い羽織も脱いで秀吉さんに返した。
秀吉「迎えなんか…見えないぞ?」
秀吉さんが目をこらして遠くを見ているので私は首を横に振った。
「迎えは近くに来ています。信長様、秀吉さん、光秀さん。
これから目にすることは誰にも言わないでください」
秀吉「何言ってんだ?どうゆうことかハッキリ言ってくれ」
秀吉さんが私の肩に手を置いた。
それだけの力で、いとも簡単にふらついた。
秀吉「っ、すまん!」
「ううん、平気」
秀吉さんが慌てて差し出してくれた腕につかまって首を振った。
空を見上げると黒い雲が野原全体を覆っていた。
(これじゃあ、どこにワームホールが発生するかわからない)
とにかく行ってみるしかない。そう決めて三人に頭を下げた。