第15章 雪原に立つ
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光秀「お館様、着きました」
荒れていた天候が回復して晴れ間が見え始めた頃、光秀さんから声がかかった。
馬が止まったのを感じて辺りを見回すと野原は一面の雪景色で、新雪が光を反射して眩しかった。
秀吉「刻限まであと少しか。早めに城を出てきて正解だったな。
迎えはまだ居ないようだ」
秀吉さんが前に馬を進めて確認する。
(雪が眩しい。鼻がムズムズしてきた)
嘔吐を誘発しそうでクシャミさえしたくない。
普段は気を付けていたけれど、雪の眩しさにやられてしまった。
クシュン!とクシャミが出た。
秀吉「っ!大丈夫か?」
慌てた秀吉さんから声が掛かり、信長様からは顔を覗き込まれた。
幸い吐き気はこなくて、へへっ、と笑う。
信長「…貴様の顔はいつ見ても阿呆面だな」
心配して損をした、という顔で信長様がからかってきた。
普段なら『ひどいです』と言い返すところだけれど、別れの時が迫っているせいか怒る気は起きなかった。
信長「言い返してこないとは貴様らしくないな」
「だってもう少しでお別れです。怒った顔じゃなく笑った顔だけ覚えていて欲しいですから」
秀吉「舞…」
秀吉さんが寂しそうに名を呼んで唇を噛んだ。
信長「お前はどんな表情だろうがいつも腑抜けた顔だろう」
どんな表情でもかっこいい信長様にそう言われてしまうと残念な気分になってくる。
「信長様、酷いです」
恨めし気に文句を言うと信長様は何故か嬉しそうに笑った。