第15章 雪原に立つ
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宿には褥が用意されていて私はそこに降ろされた。
囲炉裏と火鉢があってとても暖かい。
食べ物や飲み物は丁重に断り、ひたすら体を休ませた。
覚悟はしていたけれど馬での移動がきつく、褥に横たわってみればクタクタに疲れていた。
ウトウトしていると体を横向きにされて信長様に噛まれた首に手当てが施された。
体が温まるのを待ち、新しい温石を持たされて再び出発した。
信長「今度は俺の馬に舞を乗せる」
信長様が馬に乗ると秀吉さんが私を高く抱きあげた。
信長「軽いな」
私の体を引き寄せた時、信長様は不機嫌そうに顔をしかめた。
「しばらく食べていませんから…」
最後に食事をとったのはいつだっただろう。
睦月(1月)下旬だったような気がする。如月に(2月)に入ってからは食べても吐いて、ついには塩と砂糖以外受け入れなくなってしまった。
まとまった水を飲んだのがいつだったか記憶はあやふやだ。
信長「菓子は食べられるか?」
(お菓子・・・?)
首を傾げたところで信長様は懐から小瓶を出すのが見えた。
(金平糖だ!)
その小さな粒1つなら食べられそうな気がした。
信長様は小瓶から金平糖を1粒出して私の唇に押し付けてきた。
「んむっ」
自分で食べます!と言いたかったのに信長様の指が反論を許さず唇をこじ開けた。
金平糖がコロンと舌の上に乗ると唾液がじゅわっと溢れ出た。
その些細な刺激で吐き気がこみあげてくるかと構えたけど、大丈夫だった。
(美味しい……)
糖分を受け入れ身体が喜び急ぎ吸収しようとしている。
舌の上で転がしていると金平糖は瞬く間に角がとれ、丸くなり、やがて消えてなくなった。
吐き気が湧き上がってこなくてほっとする。