第15章 雪原に立つ
信長「光秀、この辺に休む場所はあるか?」
光秀「ええ、もう少し行くと宿屋があったはずです。
先に行って一時、休めるように話をしてきましょう」
馬が駆けていく音がして光秀さんが行ってしまった。
秀吉「辛くないか?」
(秀吉さんの方がよっぽど辛そうな顔をしているよ)
そう言いたいのに言えなかった。
秀吉「無理してしゃべらなくていい。頑張れよ、もうすぐだからな」
(秀吉さん、泣きそうな顔をしてる。心配させちゃってごめんなさい)
口がきけないので秀吉さんを励ますように微笑みかけた。
多分、本当に力ないものだったと思うけど秀吉さんは目を細めて頭を撫でてくれた。
信長「秀吉、先に馬に乗れ」
秀吉さんは素早く馬上の人になると、こちらに手を伸ばした。
信長様は秀吉さんに私を預けると自分も馬に乗り、先を歩いた。
秀吉「信長様、危険でございます。俺の後ろに」
信長「賊に襲われた時、舞を抱えているお前に何ができる。盾にもならん」
秀吉「それはそうですがっ」
「ん…」
秀吉さんの声が耳に響き、小さく唸った。
信長様は耳ざとくそれを聞きつけて秀吉さんをジロリと睨んだ。
信長「秀吉、貴様うるさいぞ。舞の身体に障る」
秀吉「申し訳ありません。舞も、すまなかったな」
体を包む布を直しながら秀吉さんがしょんぼりしている。
(ふふ、信長様と秀吉さんのやり取り、相変わらずだな)
声を発しないままニコニコ笑う私をを見て、秀吉さんも笑った。
秀吉「良かった、お前が持ち直してくれて。
ほら、もう宿だ。よく頑張ったな」
秀吉さんの視線の先を見るとこじんまりとした宿と、その前に立つ光秀さんが見えた。