第2章 夜を忍ぶ
(佐助君だっ!!)
一瞬この格好に慌ててしまったけど、よく考えれば佐助君ならスポーツウェアなんて見慣れたものだろう。
(この服の感想をきいてみようっと)
軽い気持ちで天井に返事を返した。
「どうぞ」
天井の板がすっと動き、黒い影が音もなく降り立った。
綺麗に舞い降りた姿は、いつもと違う真っ黒な忍び装束に包まれている。
目の部分しか肌はでておらず、背格好も違う。
(佐助君じゃないっ!!)
「っ……!?」
びっくりして声をあげそうになったところを簡単に抑え込まれた。
身のこなしが早すぎて、いつ後ろをとられたのかわからなかった。
誰ともわからない忍びに背後から動きを封じられ、恐怖で慄いた。
その時、フワリと嗅いだことがある香の匂いがした。
(え…まさか)
強張っていた体から自然に力が抜けた。
その香りの持ち主は、むやみに私を傷つける人ではないと知っていたから。
私の体から力が抜けたのを感じとり、背後にある体が一瞬動きを止め、抑えつける力がフッと弱まった。
恐る恐る振り返った。
???「……」
その人は口布を下げ、頭にかぶっていた頭巾も取り払った。
乱れて目にかかった髪をうるさそうに横に流し、こちらを見た二つの目は…二色(ふたいろ)だった。