第15章 雪原に立つ

秀吉さんがしどろもどろに謝ると信長様は後方へと戻っていった。


「安土一のモテ男はやることが違うね、秀吉さん。
　流石だなぁ」


『初めて触れる下着を緩められるスキル』に怒りより笑いがこみ上げてきた。


秀吉「馬鹿！違う！それに俺はお前が来てからは他の女なんか…」


「他の女の人が何？」

秀吉「何でもない。それより悪かったな、その…」


秀吉さんは気まずそうに視線をそらした。


「ふふっ、怒ってないよ。まさか下着の留め金を外されると思わなかったから、ちょっと慌てちゃっただけ」

秀吉「きっかけは不本意だが少しでも男だと感じてくれたなら本望だ」

「どういうこと？」

秀吉「さあな。わからなくて良い。
　それよりお前は国に家族は居るのか？母親は亡くしたと言っていたが…」

「去年父も病気で亡くしちゃって家族は居ないんだ」

秀吉「じゃあ恋仲の男は？お前を世話してくれるやつは居ないのか？」


家族が居ないと言うと秀吉さんが心配顔で聞いてきた。


（恋仲の男…）


そのワードに、諦めた謙信様への想いが溢れる。


「恋人は居ないよ。国へ帰ったら療養所？みたいな所にお世話になると思う。
　そこに居れば看護してくれる人が居るし大丈夫だよ、心配しないで」

秀吉「それじゃ心配する。体のことだけじゃない。お前が辛い時、一人ってことだろう？」


ズキッと胸が痛みお腹にそっと手をあてた。


（この子が居れば一人じゃない）


「大丈夫。一人で生きている女性はたくさん居るよ。
　友達も居るし、大丈夫だよ」

秀吉「馬鹿ッ…！お前、なに自分に言い聞かようとしてんだ。
　そんな不安そうな顔しやがって！」


端正な顔立ちがクシャリと歪んだ。

秀吉さんに不安をあっけなく見破られ、その暖かさが胸に染みて泣きたくなった。