第15章 雪原に立つ
「ふふ、みの虫みたい。ありがとう、秀吉さん」
光秀「秀吉、今は落ち着いているようだが馬が動けば急変する可能性がある。
しっかり見張っていろよ」
秀吉「わかった。じゃあ三成、いってくる。城をしかと守れよ」
三成「承知いたしております。
舞様、お元気になられて下さいね」
三成君は馬上の私を見上げるようにしてポツンと佇んでいる。
薄灰色の髪や紫色の着物に雪がついて冷たそうだ。
「うん、治療頑張るね。お世話になりました。猫さんにもよろしくね。
三成君……お別れだから最後に笑ってみせて?
私、三成君の笑った顔が大好きなの」
三成君は照れたように片手で口元を押さえた。
(笑って…三成君)
促すように私が笑いかけると紫の瞳が丸く見開かれて、やがていつもの輝くような笑みが浮かんだ。
(明るくて暖かい。雪が融けてしまいそう。きっと三成君を思い出す時はいつも笑ってるんだろうな)
眩しい笑顔を見せてくれた三成君に感謝して、別れの言葉を贈る。
「ありがとう三成君。元気でね、さようなら」
三成「ええ、あなたの事は忘れません。お元気で…」
最後の言葉を交わし終えたところで声がかかる。
信長「別れは済んだか。では出発する!」
秀吉・光秀「はっ!」
馬がゆっくりと進み始め、ユラユラとゆれる視界に目を瞑った。