第15章 雪原に立つ
玄関で光秀さんが履物を履く間、三成君が私を抱いてくれた。
別れを惜しむようにお互い無言で見つめ合った。
「三成君、お願いがあるの」
光秀さんをチラリと見ると、まだ腰を下ろしたままだ。
家臣の久兵衛さんと何か話している。
三成「あなた様のお願いとあらば聞きましょう。
願いとは何ですか?」
(時間がない。手身近に…言葉を選んで伝えなきゃ)
(本当は駄目だってわかってるけど三成君をどうしても…)
「あのね、家康と喧嘩しないで欲しいの」
三成君は意外に思ったようで、目を丸くしている。
三成「家康様と私が…ですか?」
「うん、周りを巻き込むようなとびっきり大きいやつ。
それだけは絶対しないで、一生のお願い」
歴史に疎いけど三成君の悲惨な最後は知っていた。
三成君は任せてくださいと言わんばかりに大きく頷いた。
三成「ええ、お約束します。大喧嘩など致しません。
多少諍いがあったとしても、私と家康様なら話し合えば必ず解決致します。
心から尊敬する家康様と喧嘩することはありません」
「ありがとう、約束…ね」
これで三成君の悲惨な運命が避けられるかもしれない。
肩から力が抜けた。