第15章 雪原に立つ
「う、うそ。だってそんな素振り全然…っひく、光秀さん。
ごめ、ごめんなさい」
今日何度目になるかわからない涙がこみあげた。
光秀さんは手ぬぐいで涙を拭ってくれて、
光秀「どうした。こちらの風習など何も知らない小娘に『土産』を買ってきただけだが?餞別代わりに持っていけ」
愛おし気に髪を撫でてくれる指が切ない。
よく見れば、押し殺そうとしてもなお溢れる熱情が瞳の奥にチラチラと見える。
いつもは何を考えているのかわからない人なのに感情が露わになっている。
「み、光秀さん。ごめん、じゃないね、ありがとう。
ずっと大事にする。絶対」
力ない手で櫛をギュッと握った。
光秀「その腹の子と共に必ず生きろ」
不意に二つの腕で抱きしめられた。
体に負担にならないような柔らかさで、でも強く抱きしめられた。
光秀さんの冴え冴えとした香りが身を包んだ。
「必ず生き抜いてみせます。だっ、だから、光秀さんも元気でいてください」
私はそう答えることしかできず、光秀さんの気持ちを想うと胸が痛んで仕方がなかった。