第15章 雪原に立つ
「ふふ、光秀さん凄いですね。その通りです。
冬になるともっと厚みがあるものを履くんですが、私がこちらへ来た時は暖かい時期だったので、このように薄いものしかありません」
光秀「そうか…。ではお前の国の女は着物ではなくこのように変わった服を着て、冬でも足をさらして歩いているのだな」
「そうですね。着物は滅多に着ません。代わりにこのような洋服というものを着ています。
洋服は形も色も多様で各々自分の好みで組み合わせて着ます。腕や足くらいなら素肌を見せても気にしないです」
光秀「そうか。愛らしい姿のお前を堪能できた、礼を言う。
秀吉あたりがお前の国へ行ったら卒倒しそうだな」
光秀さんはおかしそうに笑い、三成君の羽織をかけ直してくれた。
包まれた安心感にホッとする。
光秀「…よく頑張ったな」
唐突にそう言われ、見返した。
「何がですか?」
光秀「お前は着るもの、使う言葉、おそらく風習も違うであろう国からここへ来たのだろう?
さぞかし戸惑い、苦労しただろうと思ってな」
「ええ、そうですね」
生活する上で必要な着付け、お風呂、トイレの違いに戸惑ってばかりだった頃を思い出した。
光秀「それに孕んでいるのを明かさず、一人で悪阻(つわり)と戦っていた。
喉が傷つくほど吐いたのだろう?
国から遠く離れた地で、さぞ心細かっただろう」
「っ!」
瞬きもせず光秀さんを見つめた。
そして、いつ見てもカッコイイ光秀さんの顔が……涙でみるみる曇って見えなくなった。
「光秀さん、は、なんでそんなに優しいんですか。
いつもなんで私をわかってくれるんですか」
光秀「それはそうだな…、お前の思考は呆れるくらい真っすぐで素直だ。容易いことだ」
光秀さんは一度言い淀み、目を伏せた。
(最後だから……)
いつも感じていたことをそのまま光秀さに伝えた。