第15章 雪原に立つ
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信長「して、国へ帰るには特殊な手段が必要だといったな。
どのようにするのだ」
信長様が場を仕切り直して言った。
秀吉「この体ではそう遠くまで行けないだろう?」
三成「ええ、無理をすれば舞様の命を削ることにつながるかと…」
心配顔の二人を安心させるために首を振った。
「距離はたいしたことないの。光秀さん…」
ずっと私を抱いてくれている光秀さんを見上げた。琥珀の瞳と視線がぶつかる。
「いつか政宗と光秀さんと三人で出かけたあの場所に連れて行って欲しいの。
あそこに迎えが来るはず」
光秀「ああ、あそこか。
御屋形様、舞が言っているのは城下を南に抜けた先にある野原です」
光秀さんはその場所をわかりやすく説明し、次に私に聞いた。
光秀「迎えはいつ来るんだ?」
「あと一刻半ほどあります。信長様を説得するのにもっと時間がかかると思っていたので早めにここへ来たんです」
光秀「一刻半か。お前の状態では馬をユックリ進める必要がある。
もう出かける準備を始めた方がいい。それとも駕籠を用意させるか?」
「駕籠より馬が良いです」
狭い空間でユラユラ揺らされるよりは体勢はきつくとも新鮮な空気が吸える馬の方が絶対いい。
信長「早々に仕度に入る。光秀は先導を、秀吉は舞を抱えて乗れ。
三成、お前は城を守れ」
三人は返事をして頭を下げ、信長様は白い羽織をなびかせ天主へと上がっていった。
秀吉「三成、馬の手配は俺がやる。舞の傍に居てやれ」
留守番を言い渡された三成君を気遣って秀吉さんがそう言った。
三成「はい。お気遣いありがとうございます」
光秀「秀吉。俺の部下が馬と共に城門付近で待機しているはずだ。
また出かける旨を伝え、城まで乗ってきた馬ではなく新しい馬を用意するように伝えてくれ」
秀吉「ああ、わかった」
短い返事をして秀吉さんは急ぎ足で広間を出て行った。
三成君はそれを見送ってすぐに『お別れは先程致しました。渡したいモノがあるので取ってきます』と言って席を外した。
広い大広間には私と光秀さんだけが残った。