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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第15章 雪原に立つ


光秀「俺の心臓の音が聞こえるか?」


少し体を起こされて光秀さんの胸にピタリと寄せられた。規則正しい音が耳に響く。


(謙信様とお城から抜け出した時、同じことをしてもらった…)


思い出して胸が熱くなる。あの時と同じように自分の胸に手を当てた。
トクトクトクトクと乱れた心音が手に響く。

落ち着かなきゃと焦る私に、低く落ち着いた声が降ってきた。


光秀「鼻で息を吸い、口で吐け。大きく吸い込まなくていいぞ。
 ……そう、いい子だ」


(呼吸を乱さないようにする。心臓の速さを聞いて脈を確かめ、心を保つ)


謙信様の教えを思い出し、光秀さんの言う通りに呼吸していると徐々に脈が落ち着いてきた。
耳に響く光秀さんの心音はとても暖かで力強いものだった。


(謙信様じゃないのに、なんでだろう。凄く落ち着く…)


そのまま眠りに落ちそうになるのを耐えた。まだ話は終わっていない。


「光秀さん、ありがとうございます。落ち着きました」

秀吉「ったく、驚かせるな」

三成「舞様、気を確かにお持ちくださいね」


秀吉さんは頭に手をおいてくれて、三成君は私の空いていた手を握ってくれた。


「ごめんなさい。皆、ありがとう…」

光秀「御屋形様、私の見立てですが舞はそう長くないでしょう。
 いつ息をひきとってもおかしくありません。もってあと数日かと」


シンとした大広間に光秀さんの死の宣告が冷たく響いた。
息を呑んだ秀吉さんと三成君が信長様の判断を待っている。


「信長様…どうか…」


堅い表情のまま信長様の赤い瞳が私を見下ろしている。

初めて会った時はこの赤い瞳が冷めきっていて怖かった。
でもその奥にあるのは冷たさではなく温かさだと知ったのはいつからだろう。

天主で二人過ごした日々が物凄い速さで通り過ぎた。


信長「光秀、こやつが生き延びる方法はあるか?」

光秀「時がありませぬゆえ難しいかと…。
 すぐ治療にあたらせても効果が出る前に命尽きる可能性が高いと思われます」


秀吉さんと三成君はもう何も言わなかった。
私の様子から光秀さんの言っていることが間違っていないとわかっているんだろう。


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