第15章 雪原に立つ
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三成君は大広間の前で人を呼び止め、襖を開けてくれるよう頼んだ。
三成「信長様は中にいらっしゃいますか?」
家臣「ええ。長らく留守にされていた光秀様が帰城され、秀吉様と三人でお話しております」
家臣の方が襖を開けてくれて、三成君は軽く会釈をした。
三成「失礼致します」
三成君が一声かけて大広間へと足を踏み入れた。
中から聞こえた第一声は予想していた通り秀吉さんだった。
秀吉「三成!舞をこんな所まで連れてきて何やってんだ!」
三成「秀吉様、舞様は国へ帰られるそうです。
どうかお話を聞いてあげてください」
秀吉「なんだって?」
三成君は歩みを進めて、三人が座っている場所に着くと私を抱いたままユックリ腰を下ろした。
幸い人払いされていたようで私たちの他には誰も居ないようだった。
耳だけが敏感に気配を拾う。
光秀「小娘………どうした?」
久しぶりに聞いた光秀さんの声に誘われ、閉じていた目を開ける。
ずっと城を留守にしていたから、このまま会えずにお別れだと思っていた。
(最後に会えて良かった…)
移動の途中で吐き気が強まり、運んでもらったというのに体力を使いきった気がして身体に力が入らなかった。
光秀さんの問いに答えようにも、唇がわずかに震えるだけだった。
いつも意地悪してくる光秀さんが戸惑いがちに見つめてくる。
(ああ、光秀さんが意地悪できないくらい私は弱った姿なんだろうな)
その隣には報告書らしきものを手に持った信長様と、心配でたまらないといった顔の秀吉さんが座っている。
言葉を発せないでいると三成君が代わりに説明してくれた。