第15章 雪原に立つ
「三成君、私を好きになってくれてありがとう。
引き留めてくれてありがとう。とっても嬉しいよ」
(ああ、もっと気の利いたことを言えたらいいのに)
三成「私は舞様のことを忘れられそうにありません。
この辺りが酷く苦しく、痛いんです」
呻くようにして三成君は胸のあたりを押さえた。
その拍子に薄灰色の髪が寂しげに揺れて表情を隠した。
その姿はまさしく今の私と同じ状態だ。
好きになった人をそう簡単に忘れられるものじゃないって痛いほどよくわかる。
「三成君、私も同じ。大好きなあの人と離れ離れになって、忘れられる自信なんてない」
感情が高ぶって涙声になった。
目を閉じると謙信様が居る。
あまりにも鮮やかに思い出されてしまう。絶対忘れられない。
(こんなに愛せる人は謙信様だけ…)
涙がこぼれないよう、唇をきゅっと引き結んだ。
「じゃあさ、こうしよう?三成君の全部が大好きっていう女の子が現れるまで私を好きでいて?
それで三成君もその子が大好きになったら、私を思い出にして、その子と幸せになって欲しいな。
私も…そうする」
私は死ぬまで想いを貫くだろうけど、三成君には幸せになってもらいたくて、そっと嘘をついた。
三成「私にそのような方が現れるでしょうか」
三成君は苦し気な表情をやや和らげ目をパチパチさせた。
「絶対現れるよ。無条件で三成君のことが一番好きって言ってくれる人が、この世のどこかに必ずいるよ。
だって三成君はとっても魅力的だもの。私が保証するよ」
悪阻で気分は悪いのに自然と笑みが浮かんだ。
三成君はそんな私をジッと見つめて黙っていたけれど、やがて頷いた。