第15章 雪原に立つ
三成「舞様、私はあなたをお慕いしております。
どうか国へ帰るなどと言わず、ここに居てくださいませんか。
勝手なことをとあなたはお怒りになるでしょうが、私はあなたと共にありたい。
あなたを生かすために全身全霊で手を尽くしましょう。
どうか…行かないでください!」
「三成君が、私を?」
突然の告白に思わず目を開けてしまった。
クラリと眩暈がしたけど、目線を合わせたくてユックリ視線を上げていく。
握られている手から腕、肩、首、口元へ、そして熱を宿した菫色の瞳と目が合った。
天使の笑みは鳴りを潜め、いつも思慮深い色を湛えている瞳は揺れに揺れて切羽詰まった顔をしている。
それを見てさっきの告白は三成君の本心だとわかった。
トクン
心臓が跳ねた。
お茶やお酒をひっくり返している姿や家康とのやり取りなど、可愛いとばかり思っていたのに、まさか私を想っていてくれていたなんて全然気づかなかった。
「三成君、ありがとう。ふふ、三成君みたいな素敵な人に想いを寄せられるなんて、とても嬉しいよ。
でもごめんね、好きな人が居るの。
誰よりも愛してる。私の身も心もあの人のもの」
力ない手で心臓のあたりをおさえる。
言葉を選ぶ余裕はないから自分の気持ちをまっすぐ伝えた。
三成君の表情は変わらないままだ。
三成「失礼ですが、その方はどちらに?あなたが臥せっているのを知っているのですか?
この状態を知りながら放っておくような男なら、舞様がどんなに好いていようが私はあなたを渡しません」
いつになく男らしい言葉に想いの強さを感じ、誤解を解きたくて首を横に振った。
「今は遠くにいて連絡が取れないんだ。
寝込んでいるって知ったら、あの方は千里の道でも大海原さえも越えて会いに来てくれる人だよ。
その人と約束したの。絶対死なないって。
ここに残って私が死んでしまったらあの人の心は死んでしまう。
国へ帰れば二度と会えなくなってしまうけど、生きられるかもしれない。あの方との約束を守るために私は生きなければいけないの」
「舞様…」
三成君の手が緩んだ。
その顔は引き留める術を失くして途方に暮れていた。
私がキュッと手に力をこめると、大きな手がピクリと震えた。