第15章 雪原に立つ
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バッグ1つだけを持ち、廊下に出た。
振りかえって自分の部屋を見回し、この時代で過ごした部屋に別れを告げた。
「はっ…」
(広間に行けば誰か居るはず)
そう思って足を向けたけど、足に力が入らず柱に手を付いた。
視界がぐるぐると周り、とてもじゃないけど広間まで行けそうにない。
はぁはぁ、という息をする音だけが耳に響いた。
「体力…なくなってる」
からっぽの胃から胃液があがってきた。
胸を押さえ、必死に耐えていると…
??「舞様!?」
遠くで声がして走り寄ってくる足音がした。
「み、三成君…」
力が抜けて座り込みそうになった私を三成君が支えてくれた。
目を開けると心配顔の三成君と目が合った。
三成「舞様、その体でどこへ行かれるのですか?それにその格好は…」
「あのね、三成君。国に帰らなきゃいけないの。
皆に挨拶したい。私を皆のところまで連れて行って?」
もう言葉を選んでいる余裕はなかった。簡潔に用件を伝えることしかできなかった。
三成「舞様…」
みるみる三成君の顔が曇った。
三成「どうして急にそのようなことを?」
「このままだと私は生きられないの。国に帰ればまだ助かる可能性があると思うんだ。ごめんね、突然で」
三成「そんなっ、国中の名医を呼び寄せて治療にあたらせても駄目なのでしょうか?
私は舞様とお別れしたくありません」
優しい言葉に胸が震える。
「私はそこまでしてもらえる人間じゃないよ」
安土の敵である謙信様と関係を持ってしまった自分に、そんなことをしてもらう価値はない。
三成君は納得できないのか悔しそうに顔をしかめた。