第14章 未来を変える種
秀吉「の、信長様!?こんな夜更けにどうなさったのですか」
まさかの信長様訪問に、秀吉さんが驚きのけ反っている。
「信長様……?」
ゆっくりと視線を動かせば、信長様が懐に手をいれながら悠然と歩いてくる姿が見えた。
冷たい夜気をまとった信長様が秀吉さんの隣に座ると、空気が動き身体がフルっと震えた。
(信長様がここに来るなんて、初めてじゃない?どうなさったんだろう)
じっと見ていると、信長様はいつもの不敵な笑みを浮かべた。
信長「酒のつまみがなくなったゆえ厨に行き、ついでに舞の様子を見に来ただけだ。
秀吉が居るとは思わなかったがな。
何やら面白い話が聞こえたので、しばし聞いていた」
そう言って私のおでこに手をのせた。
微熱があるので信長様の手がぬるく感じたけれど、心地良く感じる重みと人肌のぬくもりに落ち着いた。
(厨にって、絶対金平糖を取りに行ったに決まってる)
気持ち悪さが薄れ、そんなことを考える余裕が生まれた。
秀吉さんは眉を吊り上げ信長様に詰め寄っている。
秀吉「信長様、まさかとは思いますが金平糖を盗みに行ったのでは?
何度言ったらおわかりになるんですか、夜更けに甘味はお身体にさわりますっ!!」
信長「誰が金平糖を盗んだと言った?何か証拠でもあるのか?」
信長様は懐に入れていた手を出し、何も持っていないと手を開いた。
愉しげに唇は弧を描き、目がいたずらっ子のようにキラキラと輝いていた。
(ふふ!金平糖を食べて満足されたお顔だ。
もう食べちゃったから証拠はないんだ)
秀吉さんは文句を言いたくとも証拠がないのでそれ以上言えないようだった。
悔しそうに口をへの字にしている。