第14章 未来を変える種
「うーん…………ねえ、秀吉さん。
仮定の話なんだけど自分が将来不治の病にかかったとして…」
秀吉「っ!お前、まさか不治の病なのか!?」
早とちりをした秀吉さんが目をむいて話を遮った。
「違うってば、これは病気じゃないし。仮定の話って言ったでしょ」
冗談めかした口調で諫めると、秀吉さんが大きく息を吐き、頭をガシガシとかいた。
秀吉「悪い、それで?」
「ふふ、それでね、秀吉さんが今よりももっともーっと偉く、強くなってて。
その時自分の子供が一人っ子で小さかったら、どうする?」
ありえない設定だな、と秀吉さんが軽く噴き出した。
でもそれ以上はからかうでもなく真面目に答えてくれた。
秀吉「豊臣の跡取りが一人しかいないんだったら親族とか家臣によろしく頼むしかないんじゃないかな。
しっかり育って立派な跡取りになってもらわなきゃな」
秀吉さんは私の手をあやすようにしながら、どこか遠い目で言葉を続けた。
秀吉「俺はガキの頃は貧しい暮らしをていてな、いつも腹を空かせていた。
父親は早死にしちまって母上が朝から晩まで働き通しだった。
それでも手に入るものはわずかで、母上は苦労しっぱなしだったと思う。
だから俺は妻にも子にも絶対苦労させたくないんだ。
俺が先に死ぬっていうなら、考えられる限りの手段をとって家族には幸せな道を歩んで欲しい」
「うん、そうだよね」
家族をもつ男の人なら当然の考えだ。
言葉通り、秀吉さんは子供のことをくれぐれも頼むと家臣達に言い残し、亡くなった。
(でもその後は大きな戦が起こって奥さんも子供も…)
秀吉さんの願いは海の藻屑のように、あっけなく消えてしまう。