第14章 未来を変える種
「私はなんとしても生きようって思っているから。それだけだよ。強くなんかない」
秀吉「それが強いって言ってるんだよ」
そこで一旦言葉を切ると、秀吉さんは急に真面目な顔になった。
秀吉「なぁ、お前が隠し事をしているのはわかってる。だがそれを探ろうとは思わない。
だからたまにこうして会いに来てもいいか?」
「…」
隠し通せていると思っていたのは間違いだった。
やっぱり秀吉さんの目は誤魔化せなかった。
隠し事をしていると気づいていても深く追求せず、知らぬふりをしていてくれた。
「ごめんね。どうしても人には言えない秘密があるの。
でもいつか話せたらいいな…」
謙信様と信長様が結びついた暁には、全部話したい。
嫌われても良いからきちんと謝りたい。
「それに秀吉さんは今までも毎日お見舞いに来てくれたじゃない。
今更会いに来てもいいか、なんて聞くのはおかしくない?」
秀吉「けど、最近のお前は俺が来ると警戒していただろ?
目を逸らされるなんてしょっちゅうだ」
膝の上に肘をついて頬杖した秀吉さんが寂しそうに笑った。
「それは、ごめんなさい。秀吉さんに秘密がばれるんじゃないかって心配だったの。
失礼な態度をとってごめんなさい」
秀吉「お前に嫌われたんじゃないのならいい」
「嫌いだなんて!大好きだよ!秀吉さんも三成くんも、皆、大好きだから言えないの」
妊娠を隠すのが精いっぱいで秀吉さんを傷つけていたことに気づけなかった。
大好きなのに裏切って、傷つけて、酷い人間だ。
どちらにも良い顔をしようとして、結局嫌われるのが怖いだけだ。
嫌われてもいいから、なんて嘘。
やっぱり嫌われたくない。
いつまでも皆と笑い合っていたい。
(ずるい人間だな)
滲む涙を見て、秀吉さんが安心させるように手を握ってくれる。
冷たい私の手を大きな手で温めてくれた。
秀吉「無理しなくていい。お前が話したくなった時に、な?」
はちみつ色の瞳は穏やかな光を浮かべ、私の乱れた心ごと、すっぽりと包み込んでくれた。
力の入らなくなった手で、精いっぱい握り返す。
「うん。秀吉さんに嫌われちゃうかもしれないけど、話したい」
話した時の反応が怖くて手が震えた。