第14章 未来を変える種
ワームホールが開く日が近づいている。
「………」
現代へ戻り、適切な治療を受ける。
助かる手段の1つではあるけれど、できれば避けたい。
佐助君が言っていた通りならワームホールは今回を最後に99%開かないはずだから。
不確定ながら謙信様との別れを意識した途端、心臓がきゅうっと縮んで痛み、胸を押さえた。
(現代へ帰るって決めたわけじゃない。まだ数日ある)
ぎりぎりまで謙信様を待とう。
越後と安土に安寧をもたらす策を携え、迎えにきてくれるのを。
謙信様と二人並んで生きる未来を諦めたくない。
(ワームホールが開くその日まで、待とう)
もしかしたら明日、明後日にでも謙信様が迎えに来てくれるかもしれない。
わずかな望みを持って再び布団に横たわった。