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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第14章 未来を変える種


――――
――


日に何度も嘔吐する日が続き、喉が傷ついて嘔吐の度に痛みと出血が伴った。

そんな中、弱った身体にまた新たな変調が現れた。


(なんか苦しい)


酸素を取り入れる機能が空回りしているように、呼吸を繰り返しているのに息苦しさが続いた。

はあはあと肩を上下させながら呼吸していると、小刻みに震える指先が目に入った。


「………」


脆くなった爪が数か所割れている。


(貧血…なんだろうな。当たり前だよね、栄養失調だろうし)


女中さんや三成君と会話していても気が遠くなる事があった。
下からの出血は今でも続いているし、食事を摂らなくなって久しい。

緩慢な動きで手を握って開く、を繰り返す。


(まだ動く…よね)


身体の限界がきているのはわかっていた。
謙信様を待っていては間に合わないかもしれない。


間に合わない、ということは死ぬということだ。


「……」


カサカサに乾いた唇を噛んだ。


(私は死なないって約束した)


隠れ家の宿で想いを交わした後、謙信様を残して死なないと約束した。
いくつか交わした約束の中でも最も重要なものだ。

私が死ねば謙信様は『俺に関わったから…』と自分を責め、固く心を閉ざすかもしれない。
今度こそ誰にも心許さず戦場を駆け巡り、戦の中で死を望むだろう。

そんな未来は想像するだけで嫌だ。


(謙信様の心と命を守らなきゃ)


拳を作ってギュッと力をこめる。
その手を見つめながら生きるためにどうすれば良いか考えた。

安土の皆に正直に話すという選択肢はなかった。

今更それをするなら、妊娠がわかった時点で助けを求めれば良かったんだから。


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