第14章 未来を変える種
手を借りて身体を起こすと眩暈と吐き気がして、目を閉じてやり過ごす。
三成君が背に手を添えて支えてくれた。
秀吉「大丈夫か?」
うさぎを抱っこしたままで秀吉さんが心配そうに声をかけてくれる。
「うん」
静かに目をあけて視線を動かした。
視線を動かすだけでも気持ちが悪いのでゆっくりと。
秀吉「ほら。抱いてみろ」
秀吉さんが起ち膝になり、身をこちらに屈ませて膝にうさぎを乗せてくれた。
(わぁ、モフモフ!)
猫さんも柔らかい毛並みだけど、うさぎの毛はそれよりも細くて滑らかな触り心地だ。
「ふふ、可愛い」
とてもおとなしいうさぎで触ってもジッとしている。
(謙信様も庭に住んでいるうさぎとこんな感じで触れ合っているのかな)
謙信様に撫でられるうさぎになりたいな、なんて考えてしまう。
可愛いお尻も長い耳も柔らかな毛で覆われ、せわしなく動く鼻が本当に可愛い。
(謙信様はこんな可愛い動物に私をたとえてくれたんだ。嬉しい)
今更だけど照れを感じ、口元がゆるッと緩んだ。
「本当、可愛いな……ん?」
気が付くと秀吉さんと三成君が嬉しそうに笑っていた。
「どうしたの?ふたりとも」
秀吉「どうしてって、舞の嬉しそうな顔が見られて俺は嬉しいんだ」
三成「ええ、私もです。それに舞様の顔色がとても良くなって安心致しました」
「やだ、ふたりともそんなに見ないでよっ。恥ずかしい」
(髪もボサボサだろうし、化粧っけない顔なのに…)
恥ずかしくなって睨んでも、
秀吉「だってなぁ?」
三成「ねえ?」
秀吉さんと三成君は顔を見合わせ、またしてもニコニコと笑っている。
「変に示しあわないでよ、もう」
ほんの一時の安らぎの時。
如月の半ばの頃だった。