第14章 未来を変える種
(秀吉さんは疑い深いから、少しでも動揺すればばれちゃう)
簡潔に返事をすると、秀吉さんがため息を吐くのが聞こえた。
秀吉「水が飲めないなら唇を湿らせて、それを舐めるようにしろ。
そうすれば少量でも水分を摂れるだろ?」
「ありがとう、秀吉さん。やってみるね。心配かけてごめんね、三成君」
秀吉さんは部屋を出ていき、三成君はもう少し様子を見たいと残った。
三成「医学書を読み、あなたの体調が少しでも改善する方法がないか調べています。どうか耐えてください」
三成君は手を握って元気づけてくれた。
ほっそりとした見た目とは違い、力強く固い手の平に『ああ、三成君も武将なんだ』と改めて感じる。
三成「根本的な治療にはなりませんが、弱った人間が動物と触れ合うことで症状の緩和が見込めるという書物を見つけました」
(…もしかしてアニマルセラピーのことを言ってるの?)
驚く私をよそに、三成君は淡々と説明をしている。
三成「貧民を専門に診ている医師が記録した書物にあったもので、なんの根拠もありませんが、
『薬を買うことができない者達は一度病にかかれば治療の手立てなく弱っていく。
だが犬や馬と触れ合い痛みや苦しみといった症状を一時忘れ、安らぎを得ることがよくある』
そう書かれていました。
生憎犬も馬もここに連れてくることはできませんが、今度猫さんを連れてきても良いでしょうか?」
戦国時代にアニマルセラピーの効果に気づいた人が居るなんて思いもしなかった。
この時代では信憑性はなく、ましてそれが書かれた書物は数少ないだろうに…。
それを見つけてきてくれた三成君の熱意に驚きを隠せない。
(そんなに私のこと、心配してくれたなんて…)
じわりと胸が温かくなった。