第14章 未来を変える種
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キンと冷え切った寒空に星々が瞬く夜。
舞付きの女中が天守に呼ばれ、信長に報告していた。
信長「血を吐いているだと?」
常より低い声が一段と低くなり女中がかしこまった。
女中「はい。姫様の手ぬぐいを交換した女中が気づき、私へと報告してまいりました。
血の量はさほど多くはありません。
吐かれる回数が増え、食べ物はおろか、最近は飲み物も満足にお飲みになれないようです」
信長「白湯や水もか?」
女中「はい。暖かいものは飲めないと言われて水だけ口にしておられましたが、ここ数日は水も飲めないご様子です」
信長「…………夜は眠っているか?」
女中「眠っていてもご気分が悪いようで、目を覚まし吐かれることもしばしばでございます」
信長「わかった、さがってよい。くれぐれもあやつが寝込んでいるのを他の者に悟られぬようにしろ」
女中は一礼し去っていった。
信長「冷えからくる胃の不調だというのに暖かいものは飲めぬ、とな……」
信長の視線の先に、使われることがなくなった碁盤がひっそりと置かれていた。