第14章 未来を変える種
(第三者目線)
秀吉「舞の調子はどうだ?」
秀吉は舞の部屋から出てきた女中に声をかけた。
女中は襖の方を気にするように視線をむけ、声を落として報告した。
女中「朝餉に食べたものは全て吐いてしまわれました。
微熱は下がらず、身体を起こすのも大層辛そうで…」
秀吉「そうか」
秀吉は痛ましそうに襖を見る。
女中は意を決して秀吉に詰め寄った。
女中「秀吉様。差し出がましいとは思いますが、もう一度姫様をお医者様に診てもらうことはできないでしょうか?
あまりにも姫様が辛そうで、私共もとても心配しております」
秀吉「俺も何度かそう持ち掛けたが、寒い時期はいつもこうだと一点張りでな」
女中「ですが今は如月(2月)に入ったばかり。暖かくなるまでまだ日がございます。
それまで姫様はずっと苦しまなければならないのですか?何かあってからでは遅いのですよ!?」
秀吉はもう一度説得してみると女中をなだめ、襖に手をかけた。
秀吉「入っても良いか?」
「…どうぞ」
掠れた声で返答があり、秀吉は部屋へと足を踏み入れた。
暖かい部屋の真ん中で舞は布団に横になっていた。
音をたてないよう静かに歩み寄り腰をおろした。
秀吉「調子はどうだ?」
「うん、あまり良くない…かな」
青白い顔でそれだけ告げると舞は口を閉ざした。
瞼はずっとおりたままで、愛くるしい薄茶の目を見ることはできない。
目を開けると眩暈で余計に気分が悪くなるようだと女中から報告があがっていた。
秀吉「なあ、もう一度医者に診てもらったらどうだ?
このままだとお前、暖かくなる前に参ってしまうんじゃないかって皆心配してる」
「いいよ。下手にお薬も飲めないし、それならお医者様に来て頂く必要はないでしょう?暖かくして安静にしているしかないの」
秀吉「体質って言ってたけど病じゃないんだよな?
何か隠してないか?」
念を押すように問いかけると舞は気持ち悪いのか眉間に皺を寄せて息を吐いた。
「ごめんなさい、もう、休みたい」
拒絶ともとれる舞の反応に、秀吉は胸を痛める。
秀吉「……ああ、また来る」
また説得できなかったと秀吉はため息を吐き、部屋を出た。