第14章 未来を変える種
(第三者目線)
その頃、越後では……
謙信「どういうことだ?」
謙信の前に牧が居た。
二人の間には謙信が舞に宛てた文が数通置かれている。
牧「城の警備が非常に厳しくなっております。
天井裏にまで四六時中見張りが立てられており、外部から侵入することはできませんでした」
謙信「安土の城に潜ませている者は使えんのか?」
牧「舞様の身辺は限られた者しか近寄れないようになっているそうです。
姫様の隣室には常に誰かが控えており、姫様自身の姿もとんと見かけなくなったと申しておりました」
謙信「……」
言葉を発しない謙信の代わりに佐助が口を開いた。
佐助「舞さんの身に何かあったのでしょうか。
警備強化に加え、姿が見えないなんて。
彼女は城で針子や世話係の仕事を積極的に請け負って城中歩き回っていたのに」
舞が自室に居るのは夜だけで、明るいうちは仕事を見つけてはせっせと働いている、佐助はそんな印象を持っていた。
それが姿を見せなくなるなんて、何かあったに違いない。
謙信は渡らずに戻ってきた文を取り、思案している。
謙信「牧、引き続き舞との接触を試みろ。
城に潜んでいる間諜にも舞の情報を一つでも多く集めろと伝えておけ」
牧「はっ」
牧は返事をすると風のように去っていった。
佐助「謙信様、俺も安土へ行きましょうか?舞さんが心配です」
謙信「牧に任せる。あれの技量は軒猿の中でも秀でている。
佐助、お前は傍に居ろ。
お前は何にも左右されず物事を平等に見る目がある。
安土と関係を持とうとしている今、その目が必要なのだ」
佐助「…そこまで言って下さるなら傍に居ます」
佐助は頷いた。
心配だが忍びの技量では牧の方が上だ。
それなら牧に任せ、佐助自身が必要とされた場所に居る。
それで舞を迎えに行く時が少しでも早まるのならと佐助は越後に留まった。