第14章 未来を変える種
(姫目線)
膝枕をしたまま天主で寝てしまった私は、久しぶりにポカポカと身体が温まった状態で目が覚めた。
「っ、おはようございます。信長様」
何度か同じ経験をしたため、飛び起きて褥から出た。
信長「よく眠れたか?」
信長様は片肘をついた状態で寝そべり、私の反応を愉しむように笑った。
「は、はい、とてもよく眠れました。ありがとうございます」
(またやっちゃった!)
信長様のお部屋には早朝から人がよく出入りする。誰かに見られないうちに早々に部屋に戻るに限る。
「申し訳ありませんでした。部屋に戻りますね」
退出の挨拶をして立ち上がると信長様に呼び止められた。
信長「舞」
「はい、なんでしょうか?」
振り返ると、さっきの体勢のままで信長様はこちらを見ていた。
信長「今宵も貴様を呼ぶ。寝ずに待っていろ」
「はい、わかりました」
二日連続で呼ばれるのは珍しいけれど、信長様が望むのならと了承する。
その日も、次の日も、その次の日も、夜になると信長様は天守へ私を呼んだ。
囲碁の勝負は全敗。
負けの代償として膝枕を命じられ、そのまま寝落ちする日が続いた。
鈍い私でも途中で気が付いた。
(信長様は囲碁がしたいんじゃなくて、私をあたためてくれてるんだ)
謙信様に申し訳なく思うものの、一緒に眠ると身体が温まるせいか調子が良く、朝餉は前と同じ量に戻った。
冷えが身体に戻る昼餉や夕餉は量が減ったままだったけど、朝餉だけでもしっかり食べられるようになったのは嬉しかった。