第14章 未来を変える種
(第三者目線)
舞が舟をこぎ始めた気配がして信長は目を開けた。
(寝たか…)
コクン
頭が揺れ、流れ落ちた髪が信長の頬をくすぐる。
(あいかわらず無防備な女だ)
行灯の光でも舞の顔色が良くないのがわかる。
針仕事の最中に眩暈をおこしているようだと報告がきていたが、それに加え朝餉の量の少なさが気になった。
呼び出してみれば青白い顔で触れる部分全てが冷たかった。
信長「……」
眠っている舞を抱き上げ、静かに褥へと降ろした。
背中から抱くように寝そべると、思っていた以上に舞の身体が冷たい。
信長の形良い眉が寄る。
(このように身体を冷やしておっては病を得てもおかしくあるまい)
信長は体温を分けてやるように身体をピタリとくっつけた。
氷のような冷たさに肌が泡立った。
囲碁勝負の後、舞が寝入ってしまったことがあったが、その時は柔らかく暖かい枕だった。
舞の身体をすっぽり包むように掛布団をかけてやる。
信長「今宵は俺で身体をあたためろ」
舞を枕にすると信長は朝までぐっすりと眠り、目覚めた時の爽快さは格別だった。
信長「ふっ、貴様は俺の枕で、俺は貴様の布団か。おかしなものだな」
腕の中で徐々に温もりを取り戻してきた細い体を、信長は愛おし気に抱きしめた。