第14章 未来を変える種
信長「…どうした?」
目を閉じていた信長様が目を開け、そのままの体勢で顔を覗き込んできた。
「っ、どうしたら身体が温められるか、考えていただけです」
(目をつむっていたのに、勘が鋭い方だな…)
内心の些細な動揺に気づかれた。
信長「それを考えるのはお前ではなく女中だ。
俺からも命じておく」
私の流れ落ちていた髪を耳にかけなおしてくれる。
「っ!」
男の人にそんなことをしてもらった経験がなく、耳をかすめた指先にぴくりと反応してしまう。
信長「ふっ、初心(うぶ)な反応だな。貴様、夜伽を断り続けておるが、よもやその齢で生娘か?」
「なっ!?そんなわけじゃないです。っ、なんてこと言わせるんですか」
信長「悔しいなら俺の相手をして証明してみせるんだな。
寒いというなら毎夜温めてやっても良いぞ?」
(相手って、夜伽の!?)
「寒いからと言って夜伽はしません!信長様には濃姫様がいらっしゃるでしょう?
その辺で拾った女を相手にしてはいけません」
信長「濃がいるのは確かだが、貴様に手を付けても特に問題ないが?
それにたまたま拾った女が思いのほか毛並みがよく、俺は気に入っているのだがな」
膝の上から赤い瞳で見上げられ、言葉を失う。
冗談めかした口調だったけど、真剣…な気がした。
(いつもみたいに私をからかってるだけだよね)
「駄目です。私の国では一夫一妻制なんです。
奥様がいらっしゃる方とどうこうなる気はありません」
はっきり断ると信長様は『なかなか懐かん娘だ』と笑い、そのまま目を閉じて寝息をたて始めた。