第14章 未来を変える種
(姫目線)
新年を迎え、祝いの挨拶や宴が一段落したある日、私は針子部屋で仕事に精を出していた。
この時期は戦が少なく着物の手直しの依頼も少ないそうで、皆がゆったりと仕事をしていた。
(依頼された着物は今週中に仕上がりそう!)
一心に針をすすめていき、縫い目を確認しようとした時だった。
(ん?)
縫い目が揺らいで見える。
目が疲れたのかと瞬きを繰り返してもう一度見ると、元に戻った。
(気のせいかな)
その時は特に気にもせず作業を続けた。
……けれど日を追う毎に症状は顕著になっていった。
縫い目が揺らいだぐらいの些細なことが、縫い目以外にも細かいものを見ると眩暈を感じるようになった。
最初は瞬きをしたり、少し休めば良くなったので『そのうちよくなるだろう』と軽く考えていた。
――――
――
「ふぅ」
目が辛くなって手を休めた。
(前はこうして目を閉じて休めば治ったけど…)
目を開けて手元を見るとクラリと眩暈がして、そっと息を吐く。
針子1「舞様、お加減が悪いんですか?」
隣で縫物をしていた針子仲間が声をかけてくれた。
「最近少し眩暈がするの。なんだろう、疲れてるわけじゃないんだけど…」
食事や睡眠はしっかりとっているし、仕事量もたいしたことない。
針子2「そうですか?お顔の色もすぐれないようですし、一度お医者様に診てもらってはいかがですか?」
「うん。でももう少し様子を見てみるね。そんなに酷い眩暈じゃないから」
(おかしいな、今まで眩暈なんて滅多になかったのに)
長引く眩暈にほんの少し不安を感じた頃、違う不調が現れた。