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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第1章 触れた髪


――――
――


政宗が奥州に帰っていった半月後。

朝晩の冷え込みが本格的になってきたある日の昼下がり。
私は家康に呼びだされ、安土城の部屋を訪れた。


「家康。舞だけど、入っても良い?」


一声かけると、直ぐに返答があって中に通された。
部屋の中はいつも以上に綺麗に整理整頓されていた。


(家康も帰っちゃうんだな…)


政宗が帰る時にも感じた寂しさが、また襲ってくる。

いつも素っ気ない態度と言葉ばかりだけど、家康が本当はとても優しい人だって知ってる。

怪我をしたり熱を出すとなんだかんだ文句を言いながら、治るまで傍に寄り添ってくれていた。


家康が作る薬は苦いから嫌!って言った時、ちょっと凹んでたっけ。

『だったら飲まなきゃいい。熱が下がらなくて苦しい思いをするのは舞だよ』って言いながら、次に薬を飲んだら飲みやすいように工夫されていた。


「…寂しいな」


ポツリと口からこぼれた言葉に、家康の目が見開かれた。


家康「部屋に入ってきて早々、何言ってんの。
 俺や政宗さんが安土を離れるのは、情勢が安定している証拠だ。
 戦嫌いのあんたが一番望んでいたことでしょう」

「そ、それはそうなんだけど…」


文机を挟んで家康と向かい合わせの場所に座り、俯く。

平穏で楽しい日々がずっと続けば良いと思っていたけど、それは皆が一緒に居るという前提のもとだったんだと気づく。


家康「はぁ。俺は政宗さんと違って、卯月には安土に来る予定だから…」


『そんな顔しないで』っと言ってくれているのがわかって、顔を上げる。


(卯月って4月だよね。ってことは、家康とも今日でお別れだ)


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