第13章 二人の絆
(そうか…信玄様はご病気のことを知られたくないんだ)
「わかりました。でも信玄様がおさまるまでお傍に居させてもらいますからね」
信玄「っ…!げほっ、ごほっ!」
信玄様は返事の代わりに咳をして頷いた。
(酷い事されたけど、放っておけないよ)
押し入れからありったけの布団を出してきて信玄様の背面においた。
(何かに凭れていた方が楽じゃないかな)
「信玄様、良かったらここに寄りかかって下さい」
信玄様は言われるままに布団に寄りかかってくれた。
胡坐をかいている足元に布団を掛けてやり、火鉢を近くまで引きずってくる。
信玄様が胸を押さえていて、そこが痛いのか苦しいのか察してあげられない。
(発作が治まりますように……)
信玄様の空いている手を握ってあげると咳をする度に振動が伝わってくる。
信玄「……ぅ」
「苦しいですね……」
咳の連続で言葉はおろか呼吸もままならないようだった。
時折喘ぐようにしている。
(私が医療の知識があれば何かできるかもしれないのに…)
もどかしい思いで柔らかな茶色の髪に伸ばした。
「いたいのいたいのとんでいけ……。信玄様、しっかり…」
もう十数年、口にしていなかった子供だましのまじないを口にする。
大人の信玄様に全然そぐわないのはわかっているけど、それしか私にはできなかった。
発作が落ち着きますようにと、頭や背中を何度も何度も撫でてあげた。