第13章 二人の絆
そうじゃないと、かぶりをふった。
「謙信様を理解してくれている方が傍に居て良かった。
あなたが謙信様の心を傷つける人ではなくて良かった。そういう意味です」
信玄「……」
「私は信玄様のことはよく知りませんが、謙信様はあなたをなんだかんだ言いながら心の底で信頼しているようでした。
信頼をおいているあなたが私に危害を加えたと知ったら、謙信様は二重に苦しみ傷つくでしょう。
理由はどうあれ私が傷つくことを異常ともいえるくらい心配していましたから。
私が傷つけば謙信様も傷つき、どうなるかわからないと察してくださって、ありがとうございます」
押し倒されたことは許せないけど謙信様を理解してくれる存在はありがたかった。
「刀をふるう謙信様はとてもお強いのだと思いますけど心はとても危うい方です。
ほんの数日一緒に居ただけですがそう感じるんです。
お傍に居られたら支えてあげられるのに現状ではそうもいきません。信玄様のような方が謙信様の傍に居るとわかり、とても安心しました」
信玄「姫が言う通り、あいつは戦はめっぽう強いが危うい面がある。
あいつは相当面倒くさいし手がかかるぞ?姫は本当にいいのか?」
謙信様を思い出しているのだろう。
信玄様が眉間に皺を寄せ、うーんと唸った。
押し倒してきた時の迫力はどこへいったのか、いつもの信玄様だ。
「あの方を形成しているもの全てが好きです。
笑ってる顔も、怒ってる顔も、困ってる顔も……ふふ、怒るから言いませんが可愛い顔も大好きです」
思い出したら心がポカポカ温かくなってきて抑えようとしても頬が緩んでしまう。
私の惚気を聞いて信玄様はクスリと笑った。
信玄「やれやれ、姫は謙信にぞっこんだな。
君にそこまで想われて謙信が羨ましくなるよ」
「そ、そんなことないです」
また信玄様の茶色の瞳が獲物を狙うように輝き始め、慌てた。
(し、信玄様は油断できない方だな)
飄々とした姿の裏に研ぎ澄まされた虎の爪を常に隠している。
女性を虜にする甘い容姿をもっていても、やっぱり教科書に載っていた戦国武将だ。