第13章 二人の絆
信玄「君は………」
黒色の目が驚きで見開かれた。
信玄「外見からは想像できないくらい気が強いんだな。それに驚くほど真っすぐだ。
謙信を落とすだけのことはある………いい女だ」
吐息が触れる距離でそう囁かれ、黒の瞳が本当の意味で初めて私に興味を持ったようだった。
憐みの色は消えて私を欲しているような、そんな欲を含んでいる。
「どいてください!」
信玄「可愛い姫の願いとはいえ、それは聞いてやれない。
作戦変更だ。君を俺のモノにしたい」
「は!?」
信玄「謙信をやめて俺を選んでくれないか?そうすれば万事うまくいく。
君の輿入れの際、甲斐の統治を信長に申し出る。
安土の姫の嫁ぎ先が、俺が居候している春日山城ではサマにならない。
信長は俺に統治権を譲るだろう。
本来は戦で勝ち取りたかったがそうも言っていられない」
信玄様は不本意そうな表情をしていたけど、やがていつもの表情に戻り甘い眼差しを向けてきた。
信玄「君が俺を好いてくれれば丸くおさまる」
(どこがっ!?)
「おさまりません!信玄様はご自分の国のことばっかり!
私はあなたを好きになりませんし、無理やり手を出したら謙信様が黙っていないでしょう?」
信玄「国を取り戻すのは治めていた者の責任だからな。当然だ。
しかしそうだなー。あいつは口よりも先に手が出る質だからな…さてどうしようか。
君の心はこれから俺が攻め落とすから問題ない」
悪戯を含んだ微笑みを浮かべ、信玄様は楽しそうだ。
あまりに勝手な物言いに呆れ果てる。
(信玄様ってこんな方だったの!?もっと大人なのかと思ってた!!)