第13章 二人の絆
「お断り致します。嘘の文など書きたくありません」
信玄「素直に書いた方が身のためだと思うぞ?」
色めいた笑みを浮かべているのに纏っている気配に圧が増した。
その圧になんとか持ちこたえられたのは、きっと信長様としょっちゅう囲碁をして、謙信様と密な時間を過ごした数日間があったおかげだ。
(負けない…)
「謙信様は過去に受けた傷をおして心許してくださいました。
その気持ちを裏切ることなどできません。
ずっと苦しんできたあの方の心に傷一つ負わせたくないんです。
私は謙信様を守る存在でありたい。決して傷つけません」
一瞬信玄様は感心したように頷き、でも次の瞬間にはぞっとするような冷たい笑みを浮かべて言い放った。
信玄「交渉決裂だな。だったら力づくで君を奪うとしよう」
「え?」
ざっと大きな影が動き、私と信玄様の間を線引きしていた畳のへりを大きな足が越えた。
声をあげる暇もなくグルンと視界が回り、気がつけば仰向けに倒されていた。
両手は畳に縫い付けられ、着物の裾が乱れたところに足を入れられた。
(うそでしょ!?動けない!)
力いっぱい抵抗しても信玄様は余裕の表情だ。
抵抗すればするほど着物の裾が乱れ、それに気づいて抵抗を止めた。
信玄「一番確実なのは君を葬ってしまうこと。
だが君のような女を殺すのは惜しい。
辱め、謙信の前に二度と出られないようにしてやろう」
(殺すのが惜しいから犯す…?自分の国を取り戻すためにそこまでするの?)
謙信様や佐助君から聞いた話では信玄様はこんなことをするような人には思えなかった。
けれどそれは二人の評価であって、私自身の目で見たわけじゃない。
信玄様が本当はどんな方なのか知らない。