第13章 二人の絆
信玄「部下も一緒だ。安土の連中に気取られないように数人だけだが。
それでここに着いてみれば夜明け前にここを発ったと言われてな。
そりゃあ肩透かしもいいとこだよな?」
大げさに肩をすくめて、ウインクしてくる。
(っ!!は、破壊力が!!)
男の人にウインクされるなんて初めてだし、だだ洩れてくる色香に胸が騒いで仕方ない。
「そ、そうですね。謙信様も大晦日には城に帰らないと、と言っていましたから。
安土はまだそれほどですが越後の方はもう雪が深いのでしょう?
寒い季節に長旅をされて、お身体は大丈夫ですか?」
武田信玄は確か若い頃から胸の病気を患っていたはず。
身体を冷やし、冷たい空気を吸っては病気が酷くなるのでは…。そう思って何気なく言った言葉だった。
信玄様はニコニコしながら私を見つめてくる。
顔は笑っているのに目の奥が私を探るように光っていた。
(信玄様は何を考えているのかわからない方だな)
謙信様と同盟を組んでいる方だし、謙信様は信玄様を信用しているようだった。
でも油断せず気を引き締めた方が良さそうだ。
信玄「……どちらともとれる聞き方だな。君は話術に長けているのか?」
「いえ、そんなことはありませんよ。どうして、そのように思うんですか?」
信玄「どうしてだろうな…?」
からかうような口調でちゃんとした返事はしてくれない。
信玄「そういえば姫は謙信とくっついたんだってな?」
「信玄様はどこでそんな話を?」
さっきからお互い質問に質問で返している。
信玄様はお茶を飲みたいといってくれたけど、本当は違うんじゃないか。
……そんな気がした。