第13章 二人の絆
「ふふ、佐助君、大丈夫かな。
牧さん、よろしくお願いします。ところで私から文を送りたい時はどうすれば良いですか?」
牧「あなたからだとわかる何かを文に忍ばせて置いてください。
人の目に触れなければどこに置いても構いません」
「待ってください。あらかじめ場所を決めておいた方が探す手間が省けるでしょう?
牧さんが見つかったら大変ですから」
牧「いえ、状況はその時によって変化しますから場所を決めても無駄になります。
必ず探し出してみせますので、どうぞお好きなところに隠してください」
この時代の忍びは本当に凄いんだなと実感する。
私が頷くと牧さんは近くに置いてあった駕籠に手を伸ばした。
中から雪除けの傘を取り出した。
牧「今日のところはこれで失礼致します。
俺も謙信様達を追いかけることになっておりますので」
「牧さんも年の暮れとお正月は越後で過ごせるんですね。良いお年をお迎えください。
謙信様にもよろしくお伝えください」
牧「……」
(ん?)
牧さんがピタリと動きを止めたので何か変なことを言ってしまったかと焦った。
(もしかしてこの時代、良いお年をって言わないのかな)
牧「ふっ、忍びに挨拶をする姫様はいませんよ。
お言葉ありがとうございます。舞様も良いお年をお迎えください。
あなたが春日山にいらっしゃるのを楽しみにしております」
牧さんは暇(いとま)を告げ、部屋を出て行った。