第13章 二人の絆
(ら、ラブレターだった。まさかこんな甘い内容だったなんて…。
佐助君の先輩の中で、謙信様のイメージ崩壊してるんじゃ……)
焦ってそれを受け取り、大切に仕舞った。
「………ありがとうございます。
変な事を頼んですみませんでした」
しどろもどろに謝罪している最中にも『愛している。この命尽きるまで』という殺し文句が頭の中をグルグルまわって頬に熱が集中した。
(恋文を人に読んでもらうなんて恥ずかしい!穴があったら入りたい!)
誤魔化しようもないくらい顔が熱い。
視線に耐えられなくなって顔を覆って俯いた。
しばしの沈黙のあと、佐助君の先輩が『くすっ』と笑ったのが聞こえた。
手の隙間から覗き見ると佐助君の先輩が片手で口元を覆っている。
「あの、秘密にしてくださいね?
文の内容と、私のっ、この恥ずかしい状態?状況?をっ」
恥ずかしすぎてお願いしている立場なのに、唇がムムっと尖ってしまった。
佐助君の先輩はいつもの無表情に戻ったけれど、心なしか纏う雰囲気が柔らかくなった。
?「ええ。軒猿の名にかけてお約束致しましょう。
しかしあなたのような姫様は初めてです。
体術で私を投げ飛ばし、料理や掃除を嗜み、それでいて字は読めない。
謙信様の部下と知りながら下に見るでもなく気遣いを見せ、ちぐはぐなことこの上ない方ですが、謙信様がお認めになったのがわかる気が致します。
佐助も……あなたをとても大事に思っているようでした」
佐助君の先輩は居住まいを正した。
?「牧とお呼びください。謙信様より報せがある場合、あなたの元へ私が文をお届けに参ります」
「佐助君じゃないんですね?あ、牧さんが嫌だとか、そういうんじゃないんですよ?」
牧「佐助は病み上がりで体力が落ちています。
おそらく春日山に帰ってからは謙信様自ら鍛え直されるかと…」