第12章 看病七日目 木製の鈴
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「………ん」
寝返りを打とうとしてできず目を開けた。
(動けない)
寝ぼけた頭は、何故身体が動かないのか理解できずに何度も寝返りを試みる。
「う~~~ん」
(そっか、謙信様に抱きしめられてるから動けないのか…)
やっと気づいて大人しくする。視線を上に動かすと謙信様が眠っていた。
「わぁ、謙信様の寝顔だ……」
滅多に見られないだろうとじっくり観察する。
「まつ毛長い、お肌綺麗、髪さらさらだ……なんでこんなに素敵なんだろう、はぁ」
文句のつけどころがない。カッコいい。
印象深い目が閉じられているせいか寝顔は普段よりあどけなく見える。
「ふふ、安心して眠ってくださって嬉しいな」
すっと通った鼻筋、形の良い薄い唇、顎のライン。
どこを見ても謙信様を象っているそれらは完璧で、魅了される。
どんなに眺めていても飽きない。
「こんなに格好良いなんてずるいなぁ。明日から一人だから、いっぱい見ておこうかなって、あれ?」
私を抱きしめている腕が小刻みに震え始め、薄い唇が笑いをこらえるようにキュッとなった。
「け、謙信様っ、起きていたんですねっ!?」
(カッコイイとか言っちゃった!恥ずかしいっ!!)
寝ているから言えたのであって、起きていたなら絶対言わないセリフだ。
スッと瞼が開いた。
それだけであどけなさは消え、いつもの謙信様だ。
色違いの目がスイと動いて私を捉えた。
謙信「もっと言っても構わんぞ?
いっそのことお前が俺のことをどう思っているのか全て語ってくれても良いが…?」
細い指が伸びてきて、唇をフニフニと押してくる。
「は、恥ずかしいので絶対言いません!いつから起きていたんですか?」
ぷーと膨らませた頬を謙信様が指で掴んだ。