第12章 看病七日目 木製の鈴
(何かあげたかな……マスクとか?)
恋人に渡すにしては情緒の欠片もない贈り物だ。
がっくり肩を落としていると、謙信様は『それ』を見せてくれた。
謙信「正直これを渡されて惑ったものだが、強力な力が秘められていたようだな」
「それって…」
二人で城を抜け出した夜、一人帰っていく謙信様を心配して渡した『交通安全』のお守りだ。
(ん?でも色が…)
交通安全のお守りは青いはずなのに、謙信様の手に乗っているのは淡いピンク色だ。
「まさか………縁結びのお守り!?」
京都旅行で買ったお守りは交通安全と縁結びの二つ。
バッグの内ポケットに両方入れてあった。
(部屋が暗かったし、急いでいたから間違ったんだ!)
「交通安全のお守りをお渡ししたつもりだったのに、すみません!」
親しくもない女性から縁結びのお守りを貰って戸惑っただろうと、申し訳なく思う。
謙信「やはり間違えたのか。
だがこうして舞とかけがえのない縁を結べたのなら、その間違いは導かれたものだったと思おう」
謙信様はクツクツと笑い、お守りを元の場所に仕舞った。
謙信「さあ、少し横になって休め」
「はい」
一組だけの布団に二人で潜り込む。
謙信「……冷たいな」
私の足が謙信様にあたってしまい、顔をしかめられた。
「申し訳ありません。冷え性なんです」
廊下を歩いてきたのでお風呂で温まった足はとっくに冷たくなっていた。
慌てて足を離すと長い足が追ってきて、絡めとられた。