第11章 看病七日目 愛を交わす(R18)
(姫目線)
「はぁ…あったかい」
お湯に入るとザワザワと鳥肌がたった。
冷えた身体を肩まで沈め、ホッと息をもらした。
さっき入った内風呂ではなく半露天風呂になっている湯殿に連れてこられ、謙信様は『宿の者に着替えを頼んでくる』とどこかへ行ってしまった。
奥には竹林が見え、手前には品良く庭が整えられて灯篭が幾つか置かれている。
「夜は灯篭に火が入って綺麗なんだろうな…」
紅葉を美しくライトアップしていた現代を思い出したけど、この時代にも美しいものはたくさんある。
それを見つけ、楽しんでいけば良い。
(ふふ、楽しみだな)
この先、隣には謙信様が居てくれる、そう思うだけで見る物全てが色濃く、美しく見えた。
~♪~
『花溢れる春は 想いを花びらにのせて届けましょう
美しい夜空の夏は あなたの笑顔を月に重ねるでしょう
色づく秋は あなた色に染まるでしょう
純白の冬は 恋い慕いながら涙を流すでしょう…』
遠距離の恋人を想う歌を口ずさむ。500年後の歌だ。
(明日からしばらく一人か……)
明日の早朝出発と言っていたから、今日でお別れだ。
少し切ない。
謙信「舞」
呼ばれて振り返ると謙信様が湯へ足を入れたところだった。
鍛え上げられた綺麗な体にびっくりして背を向けた。
謙信「ふっ、肌を合わせたというのに初々しい反応だな」
大きく湯船が動き、後ろから抱きしめられた。
(だ、だって、直視できないよ!ていうか普通、直視できるもんなの!?)
謙信「身体は辛くないか?」
「まだ力があまりはいらなくて…もう少し休ませていただければ平気だと思います」
謙信「そうか。日暮れまでまだ時間がある。湯からあがったら横になって休め」
「はい、ありがとうございます」
(優しいな…)
胸がキュンとなる。
謙信「聞いた事がない歌だったがお前の国の歌か?」
「はい。遠く離れた恋仲の人を想う女の子の歌です」