第1章 触れた髪
信玄「さて、天女はどの甘味が好きなんだ?好きに選んでくれ」
よく見れば豆大福、草餅、串団子などなど、それはもうたくさんの甘味が並んでいた。
スイーツバイキングのような状態に目が丸くなる。
「……凄く沢山頼まれたんですね。
信玄様と幸村さんは甘い物がお好きなんですか?」
信玄「ああ、三食甘味でも良いくらいだ」
そのくらい甘い物が好きなのに、信玄様のスタイルに無駄なお肉はついていない。
正直、すぐ顔にもお腹にも肉がついてしまう私としては羨ましい、凄く。
幸村「さん、はいらない。幸村でいい。
俺は別に甘味なんてなくてもいいけど、この人があれこれ買ってこいって言うから、甘味に詳しくなっちまった。
それに信玄様、三食甘味なんてぜってー許しませんからね。一日一個です」
信玄「だがこの一口饅頭だったら5個くらい構わないだろう?」
幸村「あ!」
幸村さんがとめようとしたけど茶色い皮をした小さなお饅頭が信玄様の口に入っていった。
幸村「さっき大福食ったじゃないですか!
ほら、舞?だっけ、信玄様に食われる前に好きなもん食え!」
幸村さんは甘味がのった皿を信玄様から遠ざけ、全部私の前に並べた。
「こ、こんなに食べられないです。太っちゃいます」
幸村「いいから、お前細すぎ。ちゃんと食べてんのか?」
「た、食べてます!細くないです、全然」
(気を抜いて座るとお腹がポッコリでちゃうなんて死んでも言えない)
帯の下に隠れているお腹を思い出して幸村さんの言葉を否定した。
いつまでも甘味に手をだそうとしない私に幸村さんがずいと栗団子がのった皿を寄こした。
「……?」
幸村「この店の一番人気はこれだ。早く食え。
それに敬語もいらないからなっ」
幸村さん、いや幸村は向かいの椅子に座り直し、信玄様が頼んだらしき栗羊羹を食べ始めた。
(ちょっと言葉はぶっきらぼうだけど、良い人っぽい…?)
そういえば佐助君が『俺と幸村はズットモだ』って言ってたっけ。
あの佐助君の友達なら……仲良くなれそう、かな。
目の前に置かれたお皿に手を伸ばした。